洞源院について
地域住民と共に生きる
~曹洞宗「禅の友」平成24年2月号より~
洞源院は、普段から日曜学校を行い、高校の合宿に境内を提供するなど、地域住民との繋がりが強い。境内を開放して共同生活することに抵抗はなかった。集まりでは食事の用意をすることも多く、広い賄い所もあり、煮炊き用のストーブは保管されている。大鍋や食器類も豊富にあり、苦もなく食事の準備はできる。備蓄用玄米を供出したが、電気がないので精米はできない。しかし、避難してきた人にとっては、温かい玄米粥は贅沢な食事である。他の避難宿泊所では、火気厳禁。とても温かい食事にはありつけない。
食事には恵まれているものの、大勢の人が横になって寝るだけの余地はない。隣の人と重なり合って寝るという状態。また、健康面や衛生面の管理も必要である。6キロ離れた水汲み場からの水の確保も大事。
そこで小野﨑住職は、各仕事に責任者を決め、作業を分担した。また、朝・夕にはミーティングを行い、情報と意見の交換を心がけた。その日の予定、いま必要なもの、いま行うべきこと、現在の震災状況などについては、その場で公表・協議した。
横になってばかりいると体が動かなくなる恐れがある、とラジオ体操も行った。4月になると、本堂での朝のお勤めも行われるようになった。本堂で寝ている人も、住職に倣って手を合わせ、読経をした。25人いた子どもたちもみんな、いつの間にかお経を覚え、大きな声で唱和していた。また、お経にはなじみのなかった人も、「お経は、心を清らかに、爽やかにしてくれる」と口々に言った。
境内の雰囲気は和気藹々としており、救援物資を運んできたボランティアの人は、「とてもここが避難所とは思えないほど、みなさん明るい表情をしていますね」と言ってくれた。お寺と地域住民が、一体となって避難生活に向き合うことがもたらした明るさだろう。